葬儀の基礎知識

エンディングノートとは?

映画でも題材に使われ、近年では一般的になってきた「エンディングノート」という言葉。エンディングノートとは終活の一環として、自分の人生の終わりをどのように迎えていきたいのかを明確に整理できるツールです。

とはいえ、実際に何を書けばよいのかわからない方も多いでしょう。今回はエンディングノートの役割や具体的な書き方についてご紹介します。

エンディングノートとは?

エンディングノートとは、自分の情報や家族などへの想い、理想の人生の終わり方などを書き留めるノートを指します。自治体によっては、エンディングノートを無料配布しているところもありますが、書店でも購入することが可能ですし、手持ちのノートに記入しても問題ありません。自分が書きやすいと感じるもので作成しましょう。

エンディングノート=遺言書ではない

エンディングノートを使って死後の希望を家族へ伝えたいと考える方も多いと思いますが、実はエンディングノートには遺言書と同じような法的効力はありません。混同されがちな遺言書とエンディングノートの違いは以下の通りです。

【エンディングノート】

・法的効力:なし

・ 法定形式:なし

・ 記載できる内容:自由

・ 作成費用:数百円

・ 内容の確認:いつでも確認可能

【遺言書】

・ 法的効力:あり

・ 法定形式:あり

・ 記載できる内容:財産の相続方法

・ 作成費用:数百円〜数万円

・ 内容の確認:原則、本人の死後に確認可能

このようにエンディングノートは遺言書のように法的効力がないものの、自由に書きたいことを書いたり自由に内容を確認できたりする点が特長です。

エンディングノートの選び方

エンディングノートは、ノートの選び方も自由です。どのような内容を書きたいのかによって、それぞれのタイプを選ぶとよいでしょう。

市販のノート

自由に書きたい方は、市販のノートを選ぶと使い勝手がよいでしょう。ただし、項目がないため書く内容に迷ってしまうことも考えられます。書きたい内容が不明確な場合は、市販のノートではなく、決められた項目があるものがよいでしょう。

無料でダウンロードできるテンプレートを使う

インターネット上には、エンディングノートのさまざまな無料テンプレートが存在しています。何を書きたいのかがはっきりと決まっていない方は、このテンプレートを利用するのがおすすめです。また、法務局のホームページ(例:東京法務局)でもダウンロードが可能なので、そちらを利用してもよいでしょう。

ワードやグーグルドキュメントで作成する

自筆が面倒な場合は、WordやGoogleドキュメントで作成する方法がおすすめです。何を書けばよいのかわからない場合は、テンプレートをダウンロードして活用しましょう。

エンディングノートに記載するべき項目

エンディングノートは自由に書いて構いませんが、最低限以下の項目だけは記載しておくことをおすすめします。

①自分の基本情報について

基本情報とは、氏名、生年月日、現住所、本籍地、血液型、家族、家系図、学歴、職歴、資格、マイナンバー、運転免許証番号、健康保険証番号、アドレス、ID・パスワードなどのデジタル情報です。これに加えて、自分史・性格・信念・趣味・特技・好きな食べ物・交友関係を書いておくと、判断能力が衰えた際に介護者の参考になるよう、できるだけ詳細に記入しましょう。

②遺言書の有無

遺言書が発見されず内容が実行されない事態を避けるため、遺言書の有無や保管場所をエンディングノートに記載しましょう。ただし、前述の通りエンディングノートには法的効力がありません。自分の希望がある場合は、遺言書にもその内容を書き記しておきましょう。

③資産・財産について

資産・財産については、家族であっても知らないパターンがほとんどです。年金証書・保険証書・介護保険証・健康保険証・通帳・印鑑・貴重品などの保管場所を書いておき、後々家族が困らないようにしましょう。

④人にお金を貸している場合

人にお金を貸している場合は、金額、相手の名前、住所、連絡先、契約書の書類、利子の有無、返済予定日などを記載します。

⑤ローンやサブスクの情報

住宅ローンや車のローンに関しては、遺族が故人に代わって返済を続けなければいけないケースが多いため、そのときに必要な情報がないとトラブルになる可能性があります。また、サブスクサービスは、契約者が死亡した後も自動的に契約が更新され続けるため、サブスクの登録状況、登録ID、パスワード、解約方法などをまとめておきましょう。

⑥家族や友人への想い

家族や友人に対しての想いや感謝は、面と向かって言いづらく、言葉を使ってすべての気持ちを伝えることは難しいものです。エンディングノートであれば、うまく伝えられない想いをすべて書き記すことができます。判断能力が低下すると感謝の気持ちを伝えることも難しくなるため、思い出を振り返りながら心を込めて書きましょう。

⑦ペットについて

残されたペットを引き取りお世話をしてくれる方に向けて、ペットの性格、好き嫌い、病歴などを記入しておきましょう。また、ペットを引き取ってほしい人や団体を記載するケースもあります。

⑧葬儀・お墓について

自分のご葬儀の希望がある場合は、詳細を記載しておきましょう。例えば、喪主をお願いしたい方の指名や連絡先、菩提寺・互助会の登録情報、葬儀社の希望や登録情報、葬儀の内容、戒名・法名、副葬品、遺影、お墓の建立、納骨方法などの希望など、死後の対応について記載します。

また、訃報を伝えるべき相手をリストアップして連絡先も記載しておくと、スムーズに手続きが進められます。

⑨医療や介護の希望

長期入院が必要になったときや要介護状態になったとき、末期の状態になったとき、家族はさまざまな決断をしなければいけません。そのときのために、医療や介護に関する要望を記載しておきましょう。介護方法の希望、介護施設の希望、費用、アレルギー、持病、常備薬、延命治療を希望するかどうかについても記入しておきましょう。

⑩保険情報について

遺族は死後すぐに年金の支給停止や健康保険証の返納などさまざまな手続きを行わなければいけません。そのため、保険証の保管場所、年金手帳の保管場所、基礎年金番号を記載しておきます。また、民間保険に加入している場合は保険会社名、保険証券の保管場所、証券番号なども書いておきましょう。

エンディングノートの保管は厳重に

エンディングノートには通帳の保管場所やパスワードなどの重要な情報が記載されているため、厳重に保管する必要があります。ただし、見つからず活用されない恐れもあるため、信頼できる人にエンディングノートの存在を伝えておくとよいでしょう。

また、エンディングノートは一度書いたらそれで終わりではありません。身体的変化、心境の変化、資産状況の変化があった場合はその都度書き直しましょう。例えば1年に1度、決まった日付に見直すようにすると、その都度人生を振り返ることができるのでよいかもしれません。