葬儀の基礎知識

後見人とは?

後見人とは、知的障害、外傷性脳機能障害、認知症などにより判断能力が十分でない方の財産管理や生活を保護・維持するために家庭裁判所から選任された人のことを指します。後見人には、未成年後見人、成年後見人、専門職後見人などがあります。

今回は、後見人の種類や役割などについて解説していきます。

後見人とは

障害や認知症などで判断能力が十分ではない人は、自身の財産管理や契約締結に関して正しい判断を行うことが困難です。そういった人を保護・支援する制度として「成年後見制度」があります。

成年後見人は通常、親族、法律・福祉の専門家、福祉法人が選ばれ、親族の場合は「親族後見人」、専門家の場合は「専門職後見人」と呼ばれています。これらの後見人は身上監護と財産管理の義務を負います。

一方で、判断能力が未熟な未成年を対象とする場合は「未成年後見人」と呼ばれます。

後見人の選任方法

後見人になるための資格は特に必要なく、18歳以上であればご本人の子どもでもなることが可能です。ただし、後見人は家庭裁判所によって選任されるため、候補者であっても必ずしも選ばれるわけではありません。

また、民法847条には後見人の欠格事由が定められています。具体的には、未成年者、破産者、成年後見人・法定代理人・保佐人・補助人を解任された過去がある人、被後見人と訴訟関係にある人、もしくは訴訟関係にあった人、その配偶者や直系血族、行方不明者などは後見人になれません。

成年後見制度について

成年後見制度は、「法定後見」と「任意後見」の2種類に分かれます。

【法定後見】すでに判断能力のない方が対象の制度

「法定後見」とは、すでに判断能力が十分ではない人に対して、家庭裁判所から選定された成年後見人が保護・支援する制度です。法定後見の場合はご本人の判断能力がすでに低下している状態であるため、ご本人が交わした契約であっても取消権(契約を無効にする権限)が認められています。

法定後見制度の申し立て時に必要な費用

・申し立て手数料 :800円
・後見登記手数料 :2,600円
・郵便切手代   :3,000~5,000円程度(家庭裁判所による)
・医師の診断書  :数千円
・戸籍謄本・住民票:数百円
・他に後見制度を利用していないことを証明するための証明書:300円

これ以外にも、状況によっては以下の費用が必要になります。

・鑑定費用(必要な場合)   :5~10万円
・手続きを専門家に依頼する場合:10~20万円

成年後見開始後の費用

・事務費用
・成年後見人への報酬:2~6万円/月
※ご本人の財産額に応じて金額は変化し、ご本人が亡くなるまで支払われます。

【任意後見】判断能力があるうちに備える制度

「任意後見」とは、将来、判断能力が不十分になることを予見して備える制度です。まだ判断能力が残っているうちに「任意後見人」になってもらう人と支援の内容を話し合い、任意後見契約を交わします。

任意後見契約後も、ご本人の判断能力が十分である間は任意後見制度は開始されません。判断能力が低下してきたら、任意後見人を監督する「任意後見監督人」の申し立てを家庭裁判所で行い、そこで選任された任意後見人による支援が開始されます。

任意後見の場合は、不利益な契約であったとしても任意後見人が取消権の行使はできません。

任意後見制度にかかる費用

任意後見の契約書は公正証書で作成しなければいけません。

・公正証書の作成手数料:11,000円
・登記嘱託手数料   :1,400円
・登記手数料     :2,600円
・その他実費が発生することがあります

任意後見開始後の費用

・事務費用
・任意後見人への報酬:相場1~3万円/月
※親族が任意後見人になる場合は、無報酬になることもあります。
・任意後見監督人への報酬:相場1~3万円/月

成年後見人等に選任されたら行うこと

成年後見人に選任されたら、まず本人の財産を調査します。その後、面談を行い生活状況や希望などを確認して今後の方針を立てた後、1か月以内に財産目録(預貯金や不動産などの財産を記載した書面)と年間収支予定表を作成して家庭裁判所に提出します。

家庭裁判所に必要書類を提出すると裁判所から冊子が配布されるので、それをよく読み成年後見人の役割について理解を深める必要があります。

また、財産目録や年間収支予定表のほかにも、ご本人の成年後見人であることを証明するため、後見用の登記事項証明書の提出が求められます。

成年後見人の仕事

成年後見人の主な仕事は、財産管理、身上監護、職務内容の報告の3つです。

【財産管理】ご本人の財産や利益を保護する

成年後見人は、ご本人に代わって財産を適切に管理しなければいけません。契約を締結したり、預貯金・収支の管理をしたりすることで財産上の利益を保護します。

財産管理の事例は以下の通りです。

・銀行等金融機関との取引
・預貯金および入出金の管理や口座解約
・日常的な生活費の送金
・日用品の購入
・契約の締結や取り消し
・税金の申告と納税
・年金の申請や受け取り
・不動産の管理や処分
・保険金の受け取り
・遺産分割協議への参加
・訴訟手続き 等

【身上監護】ご本人に代わって手続きや契約を行う

成年後見人は、ご本人の生活上の安全や健康を守らなければいけません。そのため、ご本人に代わって契約の手続き等の法律行為を行います。

身上監護の事例は以下の通りです。

・医療に関する契約や支払い
・介護等に関する契約や支払い
・要介護認定の手続き
・施設入所契約等の手続き
・要介護認定の申請
・住居確保のための不動産購入
・住居の賃貸契約や更新 等

家庭裁判所へ職務内容の報告を行う

成年後見人は、適切に職務を行っているかどうかを家庭裁判所に報告する義務があります。原則、年に1度、家庭裁判所に対して自主的に報告を行い、後見等事務報告書・財産目録・預貯金通帳のコピー・ご本人の収支予定表を提出します。

成年後見人にできないこと

成年後見人は、ご本人の代わりに法律行為を行うことは可能ですが、下記については代理できません。

・成年後見人が行った日用品購入の取り消し
・養子縁組・婚姻・離婚・認知
・遺言書の作成 ・医療行為への同意
・成年被後見人の保証人
・身元引受人になること

成年後見人はよく「介護や日常の世話もするもの」と勘違いされがちですが、ご本人の食事や入浴介助などの介護行為は成年後見人が行うことではありません。介護サービスと契約することで、ご本人がこのようなサービスを受けられるようにするのが仕事です。

また、ご本人が亡くなった時点で後見契約は終了するため、葬儀は業務の範囲外になります。

成年後見人への基本報酬

成年後見人への基本報酬の目安は月額2万円です。ただし、高額な財産を管理しなければならない場合は財産管理が複雑かつ困難なケースが多いため、その場合は基本報酬の目安も高く設定されます。具体的な目安は以下の通りです。

・管理する財産額が1,000万円~5,000万円以下:月額3~4万円
・管理する財産額が5,000万円~          :月額5~6万円

なお、身上監護において特別困難な事情があるなどの場合は、基本報酬の50%の範囲内で相当額の報酬が加算されることがあります。

成年後見人における注意事項

成年後見人は、ご本人の意志や希望を尊重したうえで安定的な生活を送れるよう配慮する必要があります。

また、成年後見人には財産を適切に管理する義務が課せられているため、成年後見人がご本人の財産管理を怠ったり不適切に管理したりした場合は、成年後見人を解任されることがあります。さらに悪質な場合は、損害賠償請求などの民事責任に問われたり、業務上横領などの罪で刑事責任を問われたりする可能性もあります。