葬儀の基礎知識

親が亡くなったら何をすればいいの?【死後2年~5年】

親や身内の死を何度も経験する方はあまり多くないと思います。そのため、いざ自分自身がご遺族となった際に「どういった手続きが必要なのかがわからない」という方も多いことでしょう。

特に親が亡くなった場合は、必要な手続きが非常にたくさんあります。なかには期限が決められているものもあるため注意しなければいけません。今回は、できるだけスムーズに手続きを進められるよう、親が死亡した後にしなければいけないことを3つの記事に分けてご紹介します。

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【2年以内】

死後2年以内にしなければいけないことは3つです。

①国民年金の死亡一時金の請求

「国民年金の死亡一時金」とは、国民年金の第1号被保険者として所定の期間(36ヶ月以上)保険料を納めた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取ることなく亡くなった場合に請求できるものです。

死亡一時金は、故人と生計を同じくしていたご遺族が受け取れます。受け取る権利の順番は以下の通りです。

1. 配偶者
2. 子ども
3. 父母
4. 孫
5. 祖父母
6. 兄弟姉妹

死亡一時金を受け取ることができるケース

国民年金の第1号被保険者とは、自営業者、学生、無職の方などを指します。そのため死亡一時金を受け取ることができるのは、たとえば親が自営業を営んでいて、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取っていない状態で亡くなったケースなどになります。

一方で、親が65歳以上である場合は老齢基礎年金を受け取り始めているため、支給対象にはなりません。また、親がずっと会社員として勤めていて、第1号被保険者として保険料を納めた期間が条件に満たない場合は支給対象にはなりません。

なお、死亡一時金受け取りの手続きは、市区町村役所の窓口、年金事務所もしくは年金相談センターで行います。

受け取ることができる死亡一時金の受給額

受け取ることができる死亡一時金の受給額は保険料を納めた月数に応じて変わり、基本的には12~32万円ほどになります。また、それに加えて付加保険料を納めた月数が36ヶ月以上の場合は、受給額にプラスして8,500円が上乗せされます。

ただし、ご遺族が遺族基礎年金を受け取る場合、死亡一時金は支給されません。また、ご遺族が寡婦年金を受け取る場合は、死亡一時金か寡婦年金のいずれか一方を選ばなければいけません。

②葬祭費・埋葬料に対する給付金の請求

ご葬儀や埋葬にかかった費用を補うため支給される給付金として「葬祭費」や「埋葬料」があります。

葬祭費

「葬祭費」とは、国民健康保険から支給される給付金で、75歳未満でかつ国民健康保険に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。一方で、75歳以上の方が亡くなった場合は、後期高齢者医療制度から支給されます。

苫小牧市と室蘭市における葬祭費の支給額については3万円ですが、基本的には市区町村によって金額が異なります。

埋葬料

「埋葬料」とは、健康保険から支給される給付金で、社会保険に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。

埋葬料の支給額は、一律5万円です。ただし、健康保険組合によっては独自の給付金として埋葬料付加金を支給してくれるケースもあります。

③高額療養費の支給申請

「高額療養費制度」とは、病院の受診や入院によってかかった医療費が一定の自己負担限度額を超えてかかった場合、その超えた分を支給してもらえる制度になります。高額療養費制度は、国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険のいずれも対象となるため、自営業、会社員などに関わらず保険に加入している場合は受給することが可能です。

なお、医療を受けていた本人が亡くなった後、まだ支給されていない高額療養費がある場合、は相続人が高額療養費の支給を請求できます。

高額療養費の自己負担限度額

高額療養費制度で定められている自己負担限度額は、所得もしくは標準報酬月額に応じて決定されます。

住民税非課税者のようにもっとも低い区分の方の場合は、自己負担限度額は約3万円になります。一般的な所得や給与額の方の場合は、自己負担限度額は約5~8万円となるケースが多いです。

高額療養費支給の申請先

・国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者:故人が住んでいた市区町村役所の窓口
・健康保険の加入者:加入していた健康保険組合

【3年以内】

死後3年以内にしなければいけないことは1つです。

死亡保険金の請求手続き

亡くなった親が生命保険あるいは死亡保険に加入していた場合は、受取人として設定されていた方に死亡保険金が支払われます。

死亡保険金の請求手続きの期限は、亡くなってから3年以内です。死亡保険金は、契約内容や受け取り額によって相続税、贈与税、所得税の課税対象となるケースもあるため、できるだけ早めに請求するとよいでしょう。

【5年以内】

死後5年以内にしなければいけないことは3つです。

①未支給年金の請求

年金受給者が亡くなった場合、本来であればその人に支給されるべき年金のことを「未支給年金」といいます。未支給年金は請求に基づいて、一定範囲のご遺族に支給され、故人が亡くなった月分まで受け取ることが可能です。

年金は原則として、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に支給されます。そのため、未支給年金で受給できるのは前月と前々月の2ヶ月分になります。

<例>

・6月10日に亡くなった場合の未支給年金:まだ支給されていない4月~6月分
・6月20日に亡くなった場合の未支給年金:6月15日に4月分と5月分の年金をすでに受給しているため、6月分の1ヶ月分のみ

未支給年金を請求できるのは3親等内の親族

未支給年金を請求できるのは、故人と生計を共にしていた3親等内の親族と定められています。未支給年金の請求は、年金事務所もしくは年金相談センターの窓口で行います。

未支給年金を受け取ることができるのは以下の順番です。

1. 配偶者
2. 子ども
3. 父母
4. 孫
5. 祖父母
6. 兄弟姉妹
7. その他の3親等内の親族

未支給年金は遺産分割の対象にならない

未支給年金を請求する方は、故人の代理として請求するのではなく自分自身の権利として請求します。

そのため、未支給年金は相続財産の対象ではなくご遺族の財産として有するため、遺産分割の対象にはなりません。また、未支給年金を受け取ったとしても相続放棄は可能です。

②遺族年金の請求

 「遺族年金」とは、故人が国民年金もしくは厚生年金保険の被保険者だった場合、故人によって生計を維持していたご遺族が受け取れる年金のことを指します。

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、遺族基礎年金を受け取れるのは、子どものいる配偶者もしくは故人の子どもです。遺族厚生年金を受け取れるのは、以下のご遺族の順になります。

1. 子どものいる配偶者
2. 故人の子ども
3. 子どものいない配偶者
4. 父母
5. 孫(原則、18歳になった年度の3月31日までの者)
6. 祖父母

遺族年金受給の条件

遺族基礎年金と遺族厚生年金のいずれの場合も、受給するためには故人に生計を維持されていたという前提条件が必要です。

そのためには、以下の要件を満たしていなければいけません。

・生計を同じくしていること(同居していること・別居している場合は仕送りを受けていること・健康保険上の扶養親族であること)
・前年度の収入が850万円未満、もしくは所得が655万5,000円未満であること

遺族基礎年金の受給額

遺族基礎年金の受給額は、受け取る年や受け取りされる方によって異なります。たとえば、ご遺族が子ども1人だった場合、その子どもが受給する場合は年額で81万6,000円になります。

遺族厚生年金の受給額

遺族厚生年金の受給額は、故人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3になります。老齢厚生年金の報酬比例部分は、故人の給与や賞与の額、年金の加入期間に応じて決定されます。

③寡婦年金の請求手続き

「寡婦年金」とは、国民年金の第1号被保険者(自営業者、学生、無職の方)である夫が亡くなり、残された妻が遺族基礎年金を受給できない場合、支給される年金のことです。一定の要件を満たすことで、妻が60歳~65歳になるまでの間、夫が受給する予定だった老齢基礎年金の一部を受給できます。

請求先は、市区町村役場、年金事務所、年金相談センターのいずれかで、請求できる人は故人の妻のみです。

寡婦年金請求における必要書類

必要書類は以下の通りです。

・寡婦年金請求書
・年金手帳(提出できないときは理由書が必要)
・戸籍謄本もしくは法定相続情報一覧図の写し
・世帯全員の住民票の写し
・故人の住民票の除票
・請求者の収入が確認できる書類
・受取先金融機関の通帳のコピー(本人名義であること)
・年金証書(他の公的年金から年金を受けている場合のみ)

※故人の死亡原因が交通事故など第三者による場合、別途書類が必要になります。

給付金額

寡婦年金の支給金額は、夫の第1号被保険者期間で計算した老齢基礎年金の4分の3です。

期限はないが早めの手続きが必要

期限はないものの、なるべく早く手続きをした方がよいものは以下の通りです。

・運転免許証・パスポート・マイナンバーカードの返却
・固定資産税・住民税の請求先変更手続き
・電気・ガス・水道・電話・NHKなどの名義変更・解約手続き
・クレジットカードの解約手続き
・インターネットサービス・SNSのアカウント削除手続き